作家ステートメント“C/M/Y” (2014-2015) 

「見つけた」と思った。
たくさんの小さな写真を色分解して再構築する中で、今までに自身の中になかった”わからない””予測がつかない”というおもしろさと出会えたからだ。写真は撮影して終わりではなく現像、プリントの過程を経てできている。この過程の中でいくつもの喜びを感じ、時に暗室の中でアイデアが固まってくることもあった。今回のこの作品は撮影後の過程が特殊で仕上がりが特に偶発的に変化するため、衝動と直感で進めていくことがもっとも重要だった。夢の断片のように不確かな輪郭の重なりから完全な答えを導き出すことではなく、それらを受け入れて見ることで画像の呪縛から解き放たれた気がした。
このシリーズではシアン、マゼンタ、イエローの画層を加えたり減らしたりすることで無意識に認識している、ものそのものの印象がどのように変化するかを実験した。
制作を進める中で、子供の頃に絵を描くときに色と色が点や線や面で混ざり合い、新たな色やかたちに変化することに興奮したのを思い出した。最初に見た色とかたちがそのものの印象を決めていたはずなのに、画層を重ねることでひとつの新たなイメージが表層に現れて、さっきまで見ていたものではなくなる。イメージの重なり方の違い、画層を増やすことや逆に減らすこと、ほんの少しの重なりの違いでそれは目の前に現れる。
無限に広がる組み合わせから制作することはまるでもう一度撮影しているかのようだった。
きっとこの選択肢の数と同じように、目に見えている色やかたちの受け取り方も人によって少しづつ違うのだろうなと感じながら、自分の遊びごころをもとに1枚づつ制作した。